英景気に減速感

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先週の中国外貨準備比率の変更発言によって一気に買い戻しが入った円だが、ドル円は109円手前で一旦折り返しを見せ、短期筋のストップを付けに111円台中盤までのドル買戻しとなっている。その他の円クロスについても先週の円買い戻しステージでは大きな下落を見せたものの、今週に入り総じて円売り基調に戻りつつあり、多くの通貨ペアで半値戻し、あるいは三分の一戻しを示現している。週末のCFTCの発表ではIMMの円ポジションはニュートラルとなっており、大半の円キャリートレードポジション巻き戻しは一息ついたと言え、ドル円は109.12円の安値を見たことで短期的には達成感が出ているのかもしれない。とはいえ、年末に向けて未だ溜まっていると思われる円売りポジションを閉じるバイアスは継続するものと思われることから年末に向けての相場展開は円高方向への力が依然として強いと思われ、ドル円ならびにクロス円の戻りは限定的となるのではないか。

昨日は英中銀の四半期インフレレポートが発表され、来年にかけて英国の景気減速について言及、それに伴って政策金利についても利下げの方向性を示唆している文言が出ている。英国は堅調な経済成長を継続してきたがここに来て、サブプライムローン問題をきっかけとした住宅価格の下落、金融機関の信用不安と米国と似たような問題を抱えており、景気の先行きは決して平坦では無いといわれている。また、米国発のサブプライムローン問題だが、米国の景気悪化に関しては既に市場に織り込んでいたのか、当初金利差面から売り込まれていた米ドルもサブプライム問題の発覚で急激な下げにつながっており、ドルに対する弱気一辺倒にマーケットが変化しつつあるように見える。2001年までのユーロに対する悲観的な見方が、2003年辺りから楽観的な見方に変化しており、またドル金利が上昇を見せ始める中でユーロの金利は追いかけて上昇となったが、ドルに対する信任は落ちる一方となり、ドルは2002年をピークとして下落傾向を続けている。

これがドル円では状況を違えており、長い景気後退局面から抜け出し始めた日本経済だが、消費者物価の上昇傾向が一向に見えないことを理由として今だ0.5%の政策金利となっており、金利差面を背景として円を対ドルでも売る動きが続いていたことからドル円は110~120円の間でのもみ合いとなっていた。対ドルでの円安は当然、その他の通貨ではさらに円安を目立たせる展開となっていたが、8月以降のサブプライム問題が市場の材料として上がってからは株式市場との連動性を高め、株式下落=円買いの動きとなっている。しかし、ドルを売り込む動きが急激であったことから、今週は売りすぎたドルを買い戻す動きのほうが逆に目立つようになっており、今週末のG20でもドルの下落を止めるような話し合いが行なわれるのではないかとの思惑も多く聞かれる。

行き過ぎたドル安、楽観的になりすぎた欧州経済の先行き、株式との連動性が高い円といったキーワードから今後の展開を考えると、上記の英国のように楽観的になりすぎているポンドやユーロに対する期待は急激にしぼむ可能性が出ており、また米国の悲観論は陰の極に近いとすれば、今後は欧州通貨売り/ドル買いの方向性が強まる可能性が高いと言えるのではないか。また、米国やアジアなど史上最高値を更新し続ける株式市場での調整的な動きが今後強まる可能性が非常に高まっている中、日本の株式市場では上げも限定的であったことから下げも限定的となる可能性は高いと言えるのではないか。このようなパターンではユーロ、ポンド、オーストラリアドルなどでドル買戻しが大きな流れとなりながらもドル円ではドル買いにつながらず、日本株の底堅さが目立ち始めると円買いにつながる可能性が高いように思える。

中国外貨準備比率変更

水曜日に中国が突然、外貨準備比率においてドルの比率を下げ、ユーロなど強い通貨の比率を上げるとの発表をしたことでドルを売る動きが急速に活発となり、ユーロドルやドル円など、他にも原油や貴金属などの対ドル相場に上昇が見られている。ユーロドルは一時1.47ドル台に乗せる動きを見せ、原油相場は96ドル台、金価格は800ドル台とドルを売り込む動きが目立っている状態である。また、タイミングが悪いのか、米ゼネラルモーターズが巨額の損失を発表、昨日の朝方には米大手証券会社であるモルガン・スタンレーが修正赤字を発表したことでドル円は一時112円近くまでの下げとなっている。水曜日の中国の発表依頼、本邦株式も合わせて世界的に株式価格が下げを見せたことから、お決まりのリスクマネーからの逃避コースを辿り、円は対ドルだけではなく、対ユーロなどでも円買戻しが出ている。

先週末に発表されているIMMデータ(FX会社などの情報)では価格が上昇する中でポジションは横ばい、あるいは通貨によってはロング減少となっており、価格が上がることによって利食いが先行、ポジションは減少傾向となる衰退期に近い印象を受けている。今回の相場では円売りが市場のテーマであったが、7月以降米国のサブプライム問題が米経済の足を引っ張るのではないかとの思惑から少しつづドル売りに転じており、世界株式市場が下落を見せる時には円を買い戻す動きが活発となる複雑な相場展開となっている。水曜日の中国からの外貨準備率の変更に関わるコメントには、さすがにマーケットは素直に地政学的に近い円を買う動きにつながり、ドル円は8月の下落時安値である111.60円に近づいている。市場は112円で下げ渋りを見せているものの、来週にかけて再度111.60円を試す展開を考えやすく、来週は円高気味の展開となるものと思われる。

現実問題として、中国は(中国政府と極めて近い機関投資家あるいは中国人民銀行)昨年以来ユーロを買いあがる場面でよく聞かれた名前であり、既に相当のユーロロングが溜まっているように想像できる。また、全人代副委員長の発言に「中国は自国の収入を使って再調整していくが、必ずしも中国のユーロ買いが増える意味ではない」とあり、既に買ってあるユーロが大量にあることからこれを外貨準備に組み入れると聞こえる。昨晩はECB、BOEの理事会が開かれ市場の大方の予想通り金利据え置きとなったものの、一部の市場関係者の中では利上げに対する期待感があったことは確かであり、この期待を背景としてユーロあるいはポンドを買い進む動きが最近目立っていた。しかし、昨晩は金利据え置きを決めたことで年内利上げの期待が高かったECBも年内は金利を据え置く可能性が高まっているといえるのではないか。

そうなれば年末に向けて各金融機関とも信用不安の中でクリスマスを迎えることを嫌い、一度買い進めたユーロやポンドなどのロングポジションを落としてくる向きが増えると思われる。現時点では底堅い動きを見せている両通貨だが、年末に向けて調整的な動きが強まる可能性が高くなっていると言えるのかもしれない。